欧州CLヤング・ガナーズ爆勝;山崎養世のコラム

ブログをリニューアルしてからチャンピオンズリーグを採りあげるのは初めて?
というわけでもないのですが、今週行なわれたグループリーグ第3節から。
結果はuefa.comの日本語サイトを見てもらうこととして、なんといっても注目は
アーセナル 7-0 スラヴィア・プラハ
7点のうち、セスク×2、ウォルコット[↓写真=Yahoo!:ロイター]×2。
Yahoo!:ロイター071024
アンリが抜けても世代交代が上手くいってるおかげか、ここまでCLはもちろん
プレミアでも負け無しの首位に立ってるアーセナル。若いチームなので勢いが
あるうちはいいですが、歯車が狂い始めた時にどうするか、でしょうね。
まあ、そこはヴェンゲルさんですし・・・。↓はハイライト映像です。

個人的にはセヴィージャに頑張ってほしいです。天国のプエルタのためにも。

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もう1つの話題はNBonlineより。
ゴールドマン・サックスを退社後、金融・財政・国際経済等で幅広く提言・
評論活動を行なっている山崎養世(やまざきやすよ)さんのコラムなど記事3点。
日本の株式市場への着眼点、あるいは教育政策の強化、国際情勢への視点など首肯
できる点があったので紹介しました。一番下“続きを読む”をクリックしてどうぞ。
米中経済同盟を知らない日本人  地図で読む世界情勢 第1部 なぜ現在の世界はこうなったか 地図で読む世界情勢 第2部 これから世界はどうなるか
なお、『米中経済同盟を知らない日本人』の著者でもある山崎養世さんには
山崎オンライン http://www.yamazaki-online.jp/
山崎養世のBLOG http://blog.livedoor.jp/zackyamazaki/
で彼のコラムなどを読むこともできますので、興味を持った方はそちらも。
深刻な株式市場の格差問題-日本経済は完全な負け組に
【NBonline 山崎養世 2007年10月25日】
 格差が、日本社会の大きな問題になっています。一方、競争が前提のマーケットの世界では、格差があるのは当たり前です。

 でも、今の株式市場の格差には心寒くなります。世界の中で日本経済が取り残されているのがはっきり見えるからです。

 今年の世界経済の最大の問題は、米国のサブプライムローンです。そのせいで、世界の株式市場は、8月に暴落しました。先週からも大きく下げました。

 サブプライムローンとは、優良(プライム)でないローン、つまり返済能力が低い人に貸す住宅ローンのことです。ここで大量の焦げ付きが発生しました。

 そうなると、サブプライムローン専門に貸し付けていた米国の金融機関の経営が悪化し、つぶれるところが出ました。次に、大手の銀行や証券会社に被害が飛び火しました。

 そして、損失は国境を越えました。英国やドイツ、フランスの金融機関が巨額の損失を被り、取り付けや破綻や顧客への資金の返還停止などの事態が起きました。

 サブプライムローンそのものや、それを組み入れた証券化商品やファンドを買っていたからでした。欧米でのサブプライムローン問題からの損失の合計は20兆円に達すると言われます。

▽日本経済は沈む米国を尻目に成長できるか?

 こうなると、米国の金融機関は、不動産関連の貸し付け全体に一気に慎重になりました。不動産の買い手が減りました。破産した借り手の不動産は売りに出されて値下がりし、やがて影響は米国の不動産全体に広がりました。欧州でも日本でも不動産関連の貸し付けが減りました。

 おかげで、米国の住宅は1970年以来の値下がりをしています。米国経済が深刻な不況に突入する危険性が指摘されています。これまでの米国の景気のかなりの部分は、不動産の上昇とそれに関連した雇用や消費に支えられてきたからです。

 収入の面では本来は家を買う余裕のない人にまで住宅ローンを貸したのが、サブプライムローンでした。そこが直撃されたわけです。

 2003年の超低金利のボトムから昨年6月まで、中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が徐々に金利を上げてきたため、サブプライムローンのような返済能力の低い借り手が真っ先に破綻してしまったのでした。消費者の購買意欲が急速に低下してきました。雇用の伸びも止まりました。

 欧州も景気後退を心配しています。米国への最大の輸出国である中国の成長にも急ブレーキがかかるのでしょうか。世界は米国発の同時不況に陥るのでしょうか。

 ところが、日本では、野村証券を除けば、金融機関は米国のサブプライムローン問題からの影響はほとんどないようでした。それなら、日本経済は沈む米国を尻目に成長を続けるのでしょうか。

▽上場企業の収益はかなりの部分が海外へ

 株は経済の鏡と言われます。株が企業の将来の収益を予想して動くからです。経済が悪化すれば、企業の収益は下がり、株は下がります。また、金利が上がり続ければ、株は下がるのが普通です。

 企業の借り入れコストが上がり、収益が減ると予想されるからです。では、今年の世界の株式市場はどうなっているのでしょうか。

 日本株は低調です。今年の日経平均は、先週末までに3%近いマイナスでした。新興株指数である日経ジャスダック平均はマイナス11.7%、東証マザーズ指数は18.8%マイナスでした。

 そして、日銀などの報告では、ようやく上向いてきたはずの景気も再び下降線をたどりだしています。再びゼロ成長に戻ってしまいそうです。

 日本の上場企業で業績が大きく伸びているのは、ほとんどが海外での売り上げが国内よりも多いキヤノン、ファナック、商船三井、小松製作所、三菱商事、任天堂、といった企業です。

 そうした企業の株主も外国人の比率が高くなっていますから、収益のかなりの部分は海外に流れるわけです。これに対して、新興企業の多くは国内向けの売り上げが主ですが、国内の消費は低迷しています。まして、上場していない地方の会社の経営は大変です。

 企業以上に大変なのが、政府部門です。国の財政は、失われた15年で大企業や銀行の不良債権処理の損失を負担したり法人税が入ってこなかったりしたことで赤字が膨らみました。

 地方自治体の財政はさらに悪化し、破綻予備軍が目白押しです。少子高齢化の影響が本格化するのはこれからの15年です。それがこれからの日本の財政を直撃します。

▽サブプライムの震源地、米国では実は影響は軽微

 株式時価総額でトップ50社の76%が東京に本社を置いていることから分かるように、日本経済の東京一極集中は進んできました。自治体財政も苦しく大企業もない多くの地方の経済はますます苦しくなります。

 「国土の均衡ある発展」は死語となりました。大企業は、生き残りのために海外に出ていき、財政負担は軽くしてくれと頼みます。

 せめて、政府が高速道路無料化ぐらいさっさと実行して、地方の経済を少しでも楽にしてあげることさえ進みません。これでは、日本株全体は買えません。悲しいことです。

 前述の通り、サブプライムローン問題の震源地である米国の株は、その影響をもろに受けています。しかし、長いスパンで経済の流れを見ると、米国の株は思いのほか堅調で、今の株価急落もその大きな流れの中の小さな調整に過ぎないことが分かります。

 ゼネラル・エレクトリック(GE)、ゼネラル・モーターズ(GM)、シティグループなど、米国を代表する30の大企業の指数であるダウ平均は、年初来、先週末までで8.5%上昇しました。

 しかも、先週1万4000ドル台を初めて突破しました。私が金融界に入った1982年には800ドル近辺だったわけですから、25年で17倍になったわけです。

 2000年にIT(情報技術)バブルが崩壊して大暴落をしたナスダック指数も元気です。今年は先週末までで12.8%上昇しました。

▽サブプライム問題どこ吹く風の新興国

 ナスダック指数とは、米国の店頭株および小型株の指数です。時価総額で加重しますから、マイクロソフト、インテル、アップル、グーグルといった巨大IT企業の株に引っ張られる傾向があります。

 その意味で、経済の先行指数という位置づけもできます。ナスダックの上昇を支えているのは、予想収益の大きな伸びです。1株当たりの利益は、ブルームバーグの統計によると年間で4割近くも増益になることが予想されています。

 ドイツ株も元気です。今年のフランクフルト指数(DAX)は、先週末までに19.5%上昇しました。ユーロが上昇していますから、円で換算すると24.6%の上昇になります。

 ダイムラーをはじめ、ドイツ企業の業績は好調です。クルマ、ファッション、グルメ、観光まで、セレブの本家欧州のブームが続き、ユーロも高くなりました。

 そして、新興国の市場は、サブプライムローン問題などどこ吹く風というように、今年は大幅な上昇を続けています。

 代表的な株式指数を見ると、先週末までに、上海117%、香港48%、台湾23%、韓国37%、インド27%、ブラジル37%、トルコ44%、と上昇しました。そして、新興各国の経済は高い成長を続けています。今年は、アジア危機は起きていません。

▽橋本政権の退陣につながったアジア危機

 アジア危機は、今から10年前の1997年に起きました。最初は、サブプライムローン問題と同じように、米国の金融引き締めでドルの金利が上昇しました。

 すると、アジアに投資していた欧米の金融機関の収支が悪化しました。それが、アジアからの欧米資金の引き揚げにつながりました。

 そうなると、アジアの不動産と株が暴落を始めました。韓国やインドネシアやタイの株価は半分になりました。アジア経済は大混乱し、政変も起きました。

 アジアの金融危機は日本にも飛び火し、山一証券、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行が次々に破綻し、日本経済は一気に後退しました。先送りしてきたバブルの崩壊です。それが橋本龍太郎政権の退陣にもつながりました。

 なぜ、今のサブプライムローン問題が欧米の株と経済の暴落につながらないのでしょうか。なぜ、アジア危機が起きないのでしょうか。そして、なぜ、日本の株と経済が取り残されているのでしょうか。

 それは、世界経済の構造が10年前とは変わってしまったからです。新興国で経済成長が続いているだけではありません。「新興国企業」の高度成長が起きています。新興国企業の収益が伸びるからこそ、新興国の株式が上昇を続けるのです。

▽ドラッカーが予測した時代の終焉

 冷戦時代には、途上国には世界的大企業はほとんどありませんでした。89年に、ピーター・ドラッカーはソ連邦崩壊を予言した名著『新しい現実』を書きました。

 その中でドラッカーは、世界規模のスーパー企業は米国、日本、ドイツ、英国の4カ国からしか生まれないと書きました。途上国は先進国に追いつけない、南北格差はなくならない、というのがその頃の常識でした。

 今、株式時価総額で見て、世界最大の銀行は中国工商銀行です。世界最大の携帯電話会社はチャイナモバイル(中国移動通信集団公司)であり、電話会社はチャイナテレコム(中国電信集団公司)です。

 世界最大の鉄鋼会社はインド人が作ったアセロール・ミタルという多国籍企業です。規模だけではありません。インドには、インフォシス・テクノロジーズやランバクシー・ラボラトリーズといった先進的なビジネスモデルを持つ企業やICICI銀行のような革新的な銀行、リライアンスやタタといったかつての三菱や三井のような大胆でスケールの大きな財閥企業があります。

 世界の家電ナンバーワンは今や韓国のサムスン電子です。小型航空機の分野で世界第2の会社はブラジルのエンブラエルです。今や、新興国から世界企業がいっぱい生まれています。

 地殻変動は中国から始まりました。89年の天安門事件で欧米や日本から経済制裁を受け、世界から孤立したトウ小平の中国は大転換を行いました。それまでの、日本に学び国営企業を改革して米国に輸出できる中国企業を作る、という方針を捨てました。

▽「米中経済同盟」の始まり

 それからは、米国企業に合弁で中国に進出してもらい、中国の安くて優秀で豊富な労働力を米国企業に提供することを本格的に始めました。そのためには、外資企業の税金はタダ、といった思い切った経済特区を全国に作りました。

 80年代に日本企業に押されっぱなしだった米国企業にとっても、中国の政策転換が復活のチャンスになりました。

 安くて優秀な労働力と土地、それに10年も安いままに放置された人民元は、中国に進出した米国企業の生産コストを劇的に下げました。米国企業は出来上がった中国製の商品を米国国内で売って、企業収益は大きく増え株が上がりました。

 株が上昇すると個人の株式への運用比率が高い米国経済では、いわゆる資産効果によって消費が増え、それに応じて雇用も増えました。こうして対中国での貿易赤字が増えても米国経済は成長を続けられたのです。

 中国にとっても、賃金や土地代の形でドルが流れ込み、さらに輸出によってドルが入ってきます。そのドルは中央銀行が吸い上げ、その代わりに人民元が国内で大きく供給され、中国経済の成長が始まりました。「米中経済同盟」の時代の始まりでした。

 やがて、米国企業は中国の国内市場をターゲットにし始めました。国内経済の成長につれて、中国企業の成長も始まりました。昨年に不良債権問題を片づけた後は、国有企業の民営化や上場によって巨大民間企業が次々に誕生しました。

 米国企業の成功を見て、日本や欧州やアジアの企業も続きました。こうして、世界の製造業の中心が中国に移りました。こうなると、世界の工業製品の生産コストは大きく下がり、物価が上がらなくなりました。

▽1999年に1バレル10ドルだった原油価格は90ドルを突破

 石油や食料の値段が何倍も上がってもインフレが起きなくなったのです。だから、マネーの値段である金利も大きく下がりました。80年代の高金利は過去のものになりました。

 世界の大企業にとっては、労働、土地、マネー、という3大生産要素の値段が大きく下がったのでした。そうなれば、企業収益が大きく上昇します。

 そして、中国以外にもインドやASEAN(東南アジア諸国連合)諸国や東欧など、中国と同じように外国企業に経済を開放して成長を始める国が続出しました。

 こうして、21世紀の世界は構造的な経済成長に入りました。そうなると、資源への需要が増えました。99年には1バレル10ドルにまで下がった原油価格は先週90ドルに達しました。

 それでも、世界の物価全体への影響はわずかです。インフレにならないから金利も急上昇しない、つまり、80年代だったらかかっていたはずのブレーキがかからないのです。

 一方で、高い資源価格はアラブ諸国やロシアやブラジルやオーストラリアに大きな収入をもたらし、経済成長を加速しています。資源国でも、ブラジルのペトロブラスやリオ・ティント、ロシアのガスプロムといった巨大資源企業の収益は加速しています。だから、ブラジルやロシアの株も上がります。

▽1989年に比べ中国の人民元は半分に安くなった

 こうして、先進国も新興国も、資源輸入国も資源生産国も成長が続きます。いつ、世界経済のこんなハイスピードの成長が終わるのでしょうか。

 しばらくは続く、と見るしかありません。なぜなら、中国発のグローバリゼーションに参加する世界中の企業にとっては、儲かる仕組みが続いているからです。

 その源泉は、中国をはじめとした新興国での安い労働と不動産です。それが資源や食料の値上がりを相殺して、インフレなき世界を実現しているからです。

 安い為替レートも中国の低コストを支えています。中国が世界から孤立した89年の天安門事件の頃、1ドルは3.8人民元でした。今、中国が世界一の外貨準備国になったのに、1ドルは7.6人民元です。人民元は半分に安くなったのです。

 1ドル360円から80円を切るまで、4.5倍の為替の上昇を経験した日本とは逆です。日本にはあれほど乱暴に円高を迫った米国は、中国には大変寛容です。

 安い人民元は、中国に進出した米国企業にとっては、安いドル建てのコストだからです。安い人民元は米中企業共同の利益です。「米中経済同盟」の最も本質的なポイントです。

 中国だけでなく、インドやトルコやブラジルなど、新興国の通貨は長い間割安に放置されてきました。過去の中南米危機やアジア危機の記憶が残っています。でも、現実は大きく変化しています。

 かつて、外貨が底を突いて日本から借りたインドは今や20兆円もの外貨準備があります。ブラジルも、今は立派な貿易黒字国であり、かつて天文学的だったインフレ率は4%程度に収まっています。新興国の為替が上昇する条件は整っています。

▽世界がまだ認識していない大きな構造変化

 実は、マーケットの地殻変動は昨年から起きています。新興国の株も通貨も本格的な上昇が始まりました。

 最大の要素は、中国が不良債権問題を財政資金で処理したことでした。そして、新興国経済に参加するなど先進国企業の株も上がりだしました。世界経済の構造変化がマーケットに少しずつ浸透しているのです。

 でも、世界のマーケットは、このコラムに書いた構造変化を、まだトータルには認識していません。それが常識になった時に、新興国投資の本格的なブームが世界的に起きるでしょう。

 その間スピード調整の下げが年に何回かあっても、上昇トレンドが続き、世界の経済成長を加速するでしょう。

 つまり、日本でよく幅を利かす、世界経済や米国経済の崩壊といった解説とは逆のことがこれからの数年で起きるでしょう。

 でも、行き過ぎると、無理に投資資金を貸すところ、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を無視して短期的な収益に走るところが出てくるかもしれません。

 さらに、長期的には投資ブーム自体が新興国の競争力を低下させます。為替が上昇し、人件費や不動産も上昇するからです。やがて、新興国企業の収益はこれ以上伸びないことや、株や不動産が上がり過ぎたことに投資家や企業家や銀行が気がついた時に、暴落が起きるでしょう。

 つまり、新興国投資も、実体の上昇、バブルの形成と崩壊、というプロセスをたどるでしょう。でも、最終サイクルはまだ見えていません。マーケットのピークはまだ先だと思います。

▽新しい時代に合わない国は地位が大幅に低下

 もちろん、新興国中心の世界経済の成長は、資源と環境に深刻な影響を与え、さらに、世界の安全保障の脅威になり得る要素をはらんでいます。

 さらに、日本に表れているように、経済や国土のあり方が新しい世界にうまく適応できない国は相対的な地位を大きく低下させるでしょう。

 そして、先進国でも新興国でも深刻な格差の問題は、社会を不安定にし、テロや暴力の温床ともなるでしょう。こうした問題についてはまた改めて書きたいと思います。

 今の世界の全体的な仕組みや、それが生まれた歴史の流れについて、そして日本がどうすべきかについては『米中経済同盟を知らない日本人』(徳間書店)にまとめました。お読みいただければ幸いです。


所得格差拡大論の誤謬-「教育」こそが世界的な2極化トレンドへの対抗策
【NBonline 竹中正治 2007年10月25日】
■関連記事
「地域間格差拡大論のウソ――格差縮小を示すマクロ指標はなぜ無視されるのか?」

 私たち人間は豊かさの絶対水準の変化よりも、身近な格差の変化にはるかに強く反応する動物だ。私の2人の子供は衣食住満ち足り、なに不自由なく暮らしている。にもかかわらず、おやつの配分をうっかりわずかでも違えると、それがもとで言い争いになる。そんな子供を大人は笑えない。

 近年の日本はとりわけ格差問題に過敏になっている。今国会では、「格差是正」のキーワードで様々な種類の「格差拡大問題」が論じられている。都市部と農村部の経済・財政格差、正規雇用と非正規雇用の給与格差、家計(あるいは個人)の所得格差などである。

 攻める野党は「格差拡大は小泉・安倍政権の負の遺産」だと攻撃し、守る与党も「格差是正」への配慮を唱える。ところが、日本社会全体として本当に格差拡大が進んでいるのかどうか、実証的な検証がなされないまま議論が展開しているのはいかにも奇妙だ。

▽世帯所得の格差は拡大しているのか?

 例えば、8月に発表された「平成17年、所得再分配調査報告書」(厚生労働省)は、世帯所得の格差の変化を報告している。この報告書が発表された時、日本経済新聞は比較的公平で十分な解説を行っていたが、ほかの多くのメディアは見出しに「格差拡大」の文字を掲げるばかりで、不十分な紹介が目立った。この報告書の22ページほどの本文をきちんと読めば専門家でなくても分かることだが、そこで明らかにされているのは世帯所得の格差が実態的には拡大していない事実なのだ。

 具体的に説明しよう。報告書は世帯の所得格差の計測にジニ係数を用いている。「ニュースを斬る」2007年8月7日付「地域間経済格差拡大論のウソ」で説明したので繰り返さないが、ジニ係数は格差(不平等度合い)を測定する代表的な概念で、値は「0」から「1」まで変化する。「0」に近いほど平等であり、「1」に近いほど不平等(格差大)であることを示す。

 報告書によると、「当初所得」のジニ係数は1993年の0.4394から2005年の0.5263に上昇した(格差が拡大)。多くのメディアはこの数字だけを拾って「格差拡大」の見出しを掲げた。当初所得とは税金や社会保険料の支払いと公的年金や医療費などの給付を加減する前のグロス所得である。

 純所得はこれら支払いと給付を加減した後の「再分配所得」で見る必要がある。再分配所得で見ると、ジニ係数は1993年0.3645から2005年0.3873となり、係数の絶対値が当初所得よりも低い(格差が少ない)だけでなく、格差拡大の幅もずっと小さい。税率や社会保険料率が変化しなくても、高齢化が進むと公的年金や老齢医療給付の受給が増えるので、所得の再配分調整が大きくなるのは当然の結果だ。

 世帯の所得格差の実態を見るためには、世帯構成員数の違いも勘案しなくてはならない。単身世帯で年間所得700万円と、4人家族で700万円では、生活の余裕がまるで違う。そこで世帯構成員数の違いを調整した「等価再分配所得」で見ると、ジニ係数は1993年0.3047、2005年0.3225となり、さらに格差の水準も変化幅も小さくなる。

▽“格差拡大”の主因は高齢化と単身世帯の増加

 「それでもジニ係数は上昇しているじゃないか」と言うことはできる。ところが、格差の拡大の主因は、同一同世代での格差の拡大ではなく、人口構成の老齢化と単身世帯の比率増加によるものであることが、報告書では検証されている。

 元々高齢者世帯の所得格差は現役世代よりも大きい。“金持ちじいさん”と“貧乏じいさん”に分化する傾向は、今も昔も変わらない。現役時代に成功して資産リッチになり資産所得のある人とない人、60歳を過ぎても働いて所得のある人と年金所得しかない人という具合に分化するからだ。

 従って、老齢人口の全人口に占める比率が上昇すると、同一世代内の所得格差が不変でも、全体の格差が拡大する(ジニ係数は上昇する)。また、単身世帯は共稼ぎ世帯を含む複数構成員の世帯より平均所得は小さい。従って単身世帯が増えると、実態的な所得格差は拡大しなくても、世帯単位で計測された見かけ上のジニ係数は上昇する。

 1993年から2005年の期間の「当初所得」拡大の要因のうち92%は、こうした人口の高齢化と単身世帯の増加によるものであることが、報告書で検証されている。さらに「再分配所得」で見ると、これら2つの要因による変化を除去したベースではジニ係数はほとんど変化していない(格差は拡大していない)。

▽格差是正の政策論争は実証的な調査とデータに基づくべき

 ただし、格差拡大の兆候が全くないわけではない。20代から30代前半の若い層では、「就職氷河期」に正規雇用に就けず、フリーターなどになった人の増加で所得格差拡大の微妙な兆候はある。しかし景気回復が続いて再び正規雇用採用が増えているので、この兆候がトレンドになるとは断定できない。

 念のために言い添えると、私はこうした政府統計を絶対視しているわけではない。公正に作られたどんな統計でもある意味で一面的であり、特有のバイアス(歪み)が避けられない。あるいは、こうした日本のマクロ統計を政府による「やらせ統計」だと考える方もいるかもしれない。

 ならば、日本の野党も「格差是正」を政策論争の目玉に掲げる以上、格差の実態について民間のシンクタンクなどを使って調査し、政府統計を覆すような実証データを提示すべきだろう。米国では与野党とも主要な政策争点ではシンクタンクや議会の委員会リサーチスタッフを利用して、少なくともその程度の調査はやったうえで政策論争しているのだ。

▽世界的な格差拡大の要因は「技術革新」と「教育」

 次に、日本の所得格差を他国と比較してみよう。これについては10月に発表されたIMF(国際通貨基金)の調査リポート(World Economic Outlook Oct.2007、「グローバル化と不平等」)が興味深い。

 IMFのリポートは各国の1人当たりの年間所得を低い方から20%、次の20%と5分位に分けた所得分布を推計している。「ジニ係数などという馴染みのない数字で説明されても、だまされたような気がする」方もいるだろう。そこで最高所得層(上位20%)が最低所得層(下位20%)の何倍の年間平均所得を得ているか(所得格差倍率)、またその所得格差倍率が過去数年拡大しているかどうかで各国の格差の状況を比べてみたのが表である。

 この報告書によると、日本の下位20%の1人当たり平均所得に対する上位20%の所得格差倍率は1994年時点で2.27倍であり、対象として挙げられた代表的な9カ国(米国、英国、フランス、日本、ロシア、ブラジル、中国、インド、メキシコ)の中では一番低い(格差が小さい)。また、この所得格差倍率が日本では1994年と2004年(2.28倍)の比較でほとんど変化していない。

 格差が縮小している国として、ロシア、ブラジル、メキシコがあるが、これらの国では日本に比べて元々途方もなく高かった所得格差倍率が縮小したに過ぎない。先進国で格差縮小を示したフランスでも日本より所得格差倍率は高い。
NBonline071025(←サムネイルをクリックすると拡大)
 さらにIMFのリポートは、過去20年間、国によってばらつきはあるものの、世界的に中・高所得の諸国を中心に所得格差拡大の傾向が見られると指摘し、その要因を分析している。同リポートは世界的な所得格差拡大の原因として、よく言われる「経済グローバル化(貿易・投資の自由化)が所得格差拡大の原因」という見解に懐疑的である。各国の対外開放度と所得格差の拡大の間には有意な関係が検証できないからだ。

 代わって同リポートが所得格差変化の検証可能な要因として注目するのは、IT(情報技術)を含む技術革新と教育機会の普及度合いである。ITを含む技術革新によって、低技能労働への需要は減少し、労賃が相対的に低下する。一方、高技能労働の職業への需要と報酬プレミアムが増加する結果、所得格差が拡大する。また、国民全体の教育へのアクセスが平等に向上すれば、国民全体の高技能職の比重が高まり、所得の向上と格差の縮小が同時に実現されると考えられる。

▽日本が強化すべき政策は「教育」、公共事業や補助金ではない

 私は「日本では格差が拡大していないので、何もしなくてよい」などと言っているわけではない。正反対である。

 もし、IMFのこの分析が正しいとするならば、日本がグローバルな経済競争と格差拡大トレンドに抗して行うべきことは、第1に若い世代の教育である。第2に技術革新の結果陳腐化した労働力の再訓練である。双方に対する財政と民間を挙げた投資が必要だ。

 日本国民全体の教育、技能水準を一層引き上げることで、世界的分業体系の中で日本が一層高付加価値部門にシフトすることが政策目標となる。そのためには財政支出も惜しむべきではなかろう。

 もっと具体的に言うと、教員の数を増やし、給料を引き上げてもよいではないか。その代わり、定期的にスクリーニングして不適格な教員には辞めてもらおう。グローバル化時代を担える人材を増やすべきならば、海外留学を志す若い世代10万人に年間200万円の支給を政府がしてもよいではないか。そのコストはわずか2000億円であり、F-15戦闘機8機分に過ぎない。

 一方、「地域間格差是正のために地方の公共事業の復活を」などと言うのは愚策の極みである。土地保有サラリーマンと化した兼業農家への財政的助成も愚策である。日本の政策的な選択は今まさに岐路に差しかかっているのだ。


フランス人から見た世界『地図で読む世界情勢』~小粋さと、非英米の視点
【NBonline 麻野一哉 2007年10月24日】
地図で読む世界情勢 第1部 なぜ現在の世界はこうなったかジャン-クリストフ・ヴィクトル他著
地図で読む世界情勢 第1部 なぜ現在の世界はこうなったか』草思社
地図で読む世界情勢 第2部 これから世界はどうなるかジャン-クリストフ・ヴィクトル他著
地図で読む世界情勢 第2部 これから世界はどうなるか』草思社

 2部構成の本書は、世界情勢や各国の歴史、隣国同士の因縁といったものを地図を使って分かりやすく解説している。第1部は主だった国の解説、第2部は世界全体の未来予想だ。元々はフランスの人気テレビ番組で、本国ではベストセラーになっている。こういった「○○を地図で読み解く」という本は類書が多いが、この本の特筆すべきは以下の3点である。

・地図が美しい。
・日本でも英米圏でもない、フランスという国の持つ視点。
・絞り込みのセンス。

 この手の本に掲載されている地図は、情報の取捨選択がされているものが普通だ。たとえば国境をテーマとして見せたいとき、河川や山脈は明示した方が理解が深まるが、細かい地名や海中の構造などはどうでもいい。というか、むしろジャマだから削ってある。本書もそこまでは同じなのだが、その不要な海や余白にひと工夫ある。

▽まず、興が乗る。仕掛けのセンスが抜群

 海の青が均一でなく濃淡がある。ダンボールのようなキャンバスに水彩画のような着色がなされているためだ。他にも、テロの解説の地図には古地図のような雰囲気をもたせている。中国の領土解説の図も、東洋風にするためか、和紙の上に描かれている。そういった工夫のおかげで、記号的な「図」が、ちょっとした「絵画」のように見えるのだ。無味乾燥な地図が、グッと情緒的になり、これは読み進める上で予想以上の推進力になる。

 評者はゲーム開発が本職なのでそれにからめて話をするが、たとえば、RPGを遊んでいて、マップ(世界地図)を表示するとする。そのとき、地図が学校の教科書みたいに無味乾燥なものだったらどうだろう。興をそがれることはなはだしい。その手の地図は、やはり古地図っぽく、すりきれた羊皮紙の風合いであって欲しいし、ストーリーと関係なくとも、海面から人魚が顔を出していて欲しい。

 この本は本来エンターテイメントではない。だから過剰な装飾は不要ともいえる。しかし、本文の主旨と直接は関係ないとしても、興味が持続する仕掛けはうれしい。正しいだけでなく、楽しい方が理解が深まるのは、脳の構造上まちがいない。こういった味付けにはセンスがいる。そのへんはさすが美の国フランスだ、とベタな感想を書きつつ、次の特筆点に移る。

 読者のみなさんは、ディエゴ・ガルシア島という島をご存知だろうか。

 恥ずかしながら、評者はこの本を読むまで存在を知らなかった。インド洋に浮かぶ島で、アメリカの軍事基地として重要なポジションを占めている。英米は、40年前、この島の住民を全員追放して、軍事基地を作ったのだ。それも自分たちの都合だけで!

 日本で流れる情報は偏っている。輸入される情報はたいてい英語圏のものであり、それ以外の国の情報も、英米のフィルターを通ったものが多い。彼らの不都合が知らされなくても、それは自然なことだろう。フランスは、アメリカのインターネットを使った情報傍受を告発したり、英米の思うがままにはならんぞという気迫を感じる国だが、この本にも、それが息づいている。

 また、英米のフィルターということだけでなく、日本のマスコミそのものにも、ある種の偏りを感じることがある。たとえば、中国に対する遠慮などもその一つだ。中国は日本への非難には熱心だが、自国の振る舞いには鷹揚だ。そして、日本のマスコミも。

 この本は、中国がチベットにどう関わっているか、ラサの地図を見せながら淡々と、しかし壮絶な描写を行っている。詳しくは本書を読んでいただくとして、日本に置き換えて簡単に述べると、天皇がインドに追い出され、都民の3倍の中国人が東京に押し寄せ、町並みがどんどん中国化する。そんな様を想像してもらえればいい。

 こういった普段なかなか目にしない情報、英米でも日本でもないフランスの視点からの情報というのが、第二の特筆点だ。

▽英米「ではない」世界の見方、考え方

 最後に、「絞り込み」の話。ぜんたいに、地図をテーマにした本は、内容が総花的になりがちだ。公平に平等にという和の精神のせいかもしれないが、日本産の本にはそういう傾向が強い。結果、データがデータのまま終わってしまい、たとえば、牛肉消費量のもっとも多い国はどこだとか、日本は何位だとか、それはそれで面白く読むことはできるのだが、トリビアの一種で終わってしまう。

 この本の場合、なんでも詰め込むということはない。大国の意思があり、それに翻弄される周辺国がある。逆に、世界から忘れられた国もある。そういった現状を浮き彫りにするのに、適した国や地域を選択的にピックアップしている。

 その選択に、フランスという立場からのバイアスは、おそらくかかっている。たとえば、ルワンダのことは書かれていない。本国フランスでの売れ行きを気にしたのかもしれないし、純粋に優先順位が低いと判断したのかもしれない。こういうところはこの本の短所ともいえるが、逆に日本という国にいる我々からすると、「はあ、そう見てるのね」という、一種の気づきにもなる。

 たとえば、拉致問題や中国との問題など、日本人が熱くなりがちな問題にたいして、フランスがどんな温度を持って観ているかを知ることができる。この本には北朝鮮や韓国の地図はテーマとして取り上げられていない。しかし、日本の領土問題については割りと詳しく触れられている。あくまで冷静に。他人事だからかもしれない。

 未来予想をしている第2部では、紛争と資源の問題を地図で表現するという試みを行っている。紛争の方はともかく、資源のほうには若干ありきたりな印象をもった。分量が多いと思う方は、第1部だけでも読まれることをお勧めする。

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